オート 登録に理解を深めよう

ところで法律はやはり道徳とは少し異なります。
そして法律、とくに憲法で使われるクフルテットは図34のようなものです。
さて日本国憲法の第三章は[国民の権利及び義務]となっています。
まず図34の上の水平線の左端の「する権利」の実例は第三章の第二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」です。
また第二十二条「何人も、……居住、移転及び職業選択の自由を有する」の「自由」は「権利」と同じ意味だといっていいでしょう。
つぎに下の水平線の左端の「する義務」の実例は第三十条「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」がそれです。
図34は図33と重ね合わすことかできますので、権利、自由は許可に対応し、義務は当為に対応します。
しかし権利と義務は実は単なるペアをなすのではなく図34で示されるよりにクワルテフトを構成します。
そしていまあげた例は「する権利」、「する義務」の方でした。
だとすると「しない権利」、「しない義務」はどうなるのでしょうか。
「しない義務」の例は第二十七条第三項「児童は、これを酷使してはならない」がそうです。
ここでは義務ということばこそありませんか、酷使を禁止しているわけですから、図32と図34を重ね合わせると。
「しない義務」とおなじことになります。
それでは最後に残った「しない権利」はどうでし-4うか。
実は「しない権利」を規定した法文はどこにもみつかりません。
しかしこれはどうしたことでしょうか。
この理由をこんどは憲法でなしに、普通の法律を例にとって考えてみましょう。
明治三十三年に決められた未成年者喫煙禁止法の第一条はこうです。
「満二十年二至ラサル者ハ煙草ヲ喫スル=トヲ得ス」。
また大正十一年に決められた未成年者飲酒禁止法の第一条はこうです。
「満二十年二至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スル=トヲ得ス」。
この二つは似たようなものですので、喫煙禁止法だけを使います。
さていまの条文から満二〇歳未満の人間には喫煙が許されないことがわかりますが、このことは二〇歳に達すると喫煙か許される、つまり喫煙する権利か得られるということを意味します。
しかし喫煙することが許されるということと、喫煙が義務だということとは別です。
喫煙は義務ではありません。
だから図34でわかるように義務の矛盾的対立者、つまり「しない権利」というものが存在します。
すなわち、二〇歳になったからといって別に喫煙しなければならないことはなく、喫煙しない権利、喫煙しない自由もちゃんとあるのです。
もうI度憲法にもどりますと、第十五条で普通選挙権が伏障されていますか、これは投票の義務ではなくて、投票する権利であり、だから投票しない権利、つまり棄権の権利もあると解釈できます。
もちろん棄権はほめたことではありませんし、棄権の権利は憲法で明記されてはいません。
しかし投票は義務ではありませんので棄権しても罰せられないことだけは事実なのです。
いまの「権利」と「義務には、まえの「可能」と「必然」の場合とよく似かよったパタIンだということに気づいたことでしょう。
つまり「する権利」と「しない権利」といった小反対対立のほうか「する義務」と「しない義務」といった反対対立よりもゆとりのある、ゆるい対立関係にあるといえるのです。
ところで権利はまた自由といいかえることかできます。
したがってそうした自由のレベルのほうか、義務というきゅうくつなレベルよりも大らかであるのは当然といえば当然のことです。
人類の歴史、世界の歴史は、人権拡大の歴史といってもいいでしょう。
一七八九年のフランス人権宣言から始まり一九四八年の世界人権宣言までの歩みがそうですし、憲法のほうでいえば、各国の憲法はどれも人権の保障を競ってとり入れるようになります。
そして日本国憲法もまたその例外ではないのです。
このようにして日本国憲法は、人権つまり人間や国民の権利の保障を高らかにうたったものです。
だからロ本国憲法には権利についての条件がたいへん多いのです。
しかしもちろん国民は権利だけを行使して義務を怠っていいわけではありません。
納税をはじめ、義務のほうの規定も書かれてあります。
さっき出した第三十条の納税の義務をはじめ、第二十六条の、子女に教育を受けさせる義務、第二十七条の動労の義務等がそうです。
こうして権利と義務とはどちらか一方だけでいいといったものではなく、両方とも必要であり、しかも両方がほどよいバランスを保っていなければならないのです。
そしてじっさい、権利と義務の関係は図34で示されたようなク。
ルテットの構造で完全に規定されているのです。
ドーモルガンの定理憲法第四十八条は両議院議員兼職禁止を述べたもので、条文はつぎのとおりです。
「何人も、同時に両議院の議員たることはできない」。
この条文をもう少し形式化するとつぎのようになります。
〔『A氏が衆議院議員である』そして「A氏が参議院議員である」]ということはない。
これをもっと形式化するとつぎのようになります。
さてこうした形式化した複合文はつぎのよりな複合文と同じです。
A氏は衆議院議貝でないか、A氏は参議院議員でない。
右の二つの文は「か」つまり選言的接続詞を使った文です。
ところで選言には、二つの種類がありましたね)。
排他的と非排他的の二つです。
ここでの「か」は非排他的です。
つまり同時成立をも認めるような選言です。
ここでいう同時成立とは、「A氏は衆議院議員でもなく、そして参議院議貝でもない」という場合です。
じっさい、日本国民の大人たちの大部分は衆議院議員でもなく。
参議院議員でもありません。
同等であるという公式は、論理学ではドーモルガンの定理といわれます。
ドーモルガンとは十九世紀に活躍したノーギリスの優れた論理学者の名まえです。
さてここでまたド・モルガンの定理に関して図をつくりましょう。
漢文で習った知識を動員します。
ます「不倶」は「ともには~せず」と読み、「倶不」は「ともに~せず」と読みましたね。
そして前者は一部打消しで、後者は全部打消しであり、はっきり区別すべきものです。
ただし倶は皆とちかいます。
不皆(みなは~す)と皆不(みな~ず)の場合の皆は三つ以上でもかまいませんが倶の場合は二つに限ります。
そしてドーモルガンの定理の場合は二つですから倶のほうかよいのです。
さてドーモルガンの定理は、いまの図35からどのようにして読みとれるかといいますと、白そして(リ)は図の左下の「倶」であらわせます。
さらにその否定は対角線的位置にある「不倶」であらわせます。
この不倶は部分打消しの方でして、否定は否定でも、全部打消しの倶不のほうは倶の水平線上の右側に置かれるのです。
さらにいうならば、倶にたいしてヽ不倶のほうは矛盾的対立であり、倶不のほうは反対的対立であって、その区別は図を見ればひと目でわかります。
そしてド・Eルガンの定理の方は矛盾的対立のほうなのであり、こうとわかれば、「倶と不倶」とは対称的位置にある「倶不と不倶不」の間にも、ドーモルガンの定理が働くはずであり、じっさいそれを書き上げてみるとつぎのとおりとなります。
このようにドーモルガンの定理は、たすきがけの位置関係で成立するものであることがわかりました。

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